
大同特殊鋼グループの商社部門として鉄鋼、原材料、機械などの取引を手がけ、グローバルビジネスの強化に取り組む大同興業株式会社。
SCSK株式会社の商社向けテンプレート「Trade-Kit」によりSAP ERPの会計、販売、在庫、貿易管理、分析などすべての機能をビッグバン導入した同社は、独自のEDIシステムで周辺システムとの連携を図った新経営管理システム「Diana」の本稼動を、約1年で実現した。
新基幹システムは「DKK(大同興業)経営管理システム」の頭文字を取って「Diana(ダイアナ)」と名付けられ、まずは国内の情報基盤の整備をターゲットに、2012年11月にキックオフした。導入するSAP ERPのモジュールは、販売管理(SD)、在庫管理(MM)、貿易管理(GTM)、会計(FI/CO)、固定資産管理(AA)で、その他にも経営の管理/分析レポートの機能としてSAP BWとSAP BusinessObjects、主要取引先との受発注情報などをやり取りするためのEDIシステムと、 非常に大がかりとなった。

そのためプロジェクト体制も社長を筆頭に、マネージャー、プロジェクトリーダー、プロジェクトリーダー補佐に経営のトップ層が就任。重要な意思決定が求められる場面ではトップダウンで迅速な判断が行われ、アドオンなどの作り込みを最低限に抑えた開発方針が徹底された。導入に関する実務は、経営統括本部の経営企画部が牽引し、システムを利用する営業部隊からも取引品目単位でチームを組んだメンバーが参画した。なかでも重視したのが、営業ユーザーへの早期教育だ。大同興業は、本稼動予定の約6カ月前、設計フェーズの終了後ただちに操作教育に着手した。「当初はプロジェクトの後半2カ月で教育を実施する予定でした。しかし要件定義段階で私自身が操作してみて、受発注から売上計上までの流れを営業担当者が2カ月で習得するのは困難と判断しました。東京、名古屋、大阪の営業拠点3カ所を回って教育するにも物理的な限界があります。そこで開発と並行してシステムのプロトタイプを使いながら、営業ユーザーに対して粘り強く操作教育を実施しました」と、経営統括本部 経営企画部 次長で経営企画室の近藤康司氏は語る。早期段階から操作教育を実施したことで、全社的な意識が統一されたという。「ユーザーは、システムを使う段になってから慌てて意識をし始めるものですが、今回は開始段階からユーザーを集めて目的を説明し、意見を吸い上げながら進めたことで社内全体の意識が高まりました。早期教育を通じた現場とのコミュニケーションが、本稼動後に大きな混乱もなくスタートできたことにつながりました」(伊藤氏) もう1つのポイントが、企業間データ交換用のEDIシステムの構築だ。受け取るデータは、注文請けデータ、送状データ、出庫データなど多岐にわたる。そこで、EDIシステムはSAP ERPから切り離し、市販のEDIパッケージをベースに開発。そして各種データを共通のフォーマットに変換する機能を実装し、SAP ERPとグループ会社のシステムをスムーズに連携させる仕組みを作った。これにより、今後EDI 要件が追加される際にも、新たにインターフェースを開発しなくて済む。「EDIシステムの構築には、経験豊富なSCSKのコンサルタントの知識が大いに役立ちました。鉄鋼取引独自の業務要件についても納得がいくまでヒアリングしていただき、他の商社のノウハウを元に実用性の高い提案がなされ、結果的に品質の高いEDIシステムが構築できたことに満足しています」(前田氏)
プロジェクトは当初の予定通り、2013 年12月にカットオーバーを迎えた。「操作教育に時間をかけたとはいえ、20年以上慣れ親しんだホストシステムを使ってきただけに、直後は多少の戸惑いはありました。しかし、本稼動から数カ月経つとユーザーもようやく操作に慣れ、新システムの利便性を実感し始めています」(近藤氏) 全社一丸となって取り組んだDianaプロジェクトは、経営層からも高く評価され、本稼動後には大同興業の社内において社長表彰を受賞。業務の効率化の面では、徐々に変化が現れつつあるという。また、経営層向けの経営ダッシュボード機能の活用に向けて、現在もSCSKとともに、具体的な指標の見せ方などを検討中だ。「経営層向けのレポートは従来、担当者が各システムから実績を収集してExcelやPowerPointなどで作成していたため、さまざまな要望に迅速に答えることは困難でした。今後はSAP BusinessObjectsによる各種指標のグラフ化やシミュレーションを活用してきめ細かく要望に応えていきます」(前田氏) さらに今後は、Dianaの海外展開も視野に入れている。2015 年度から始まる次期中期経営計画で戦略を固め、グローバルを見据えたインフラ環境を強化していく予定だ。国内においても、ユーザーの要望に応じてより使いやすいシステムに育てていくため、今後もSCSKの支援と提案に期待しているという。Dianaを重要な経営戦略基盤に位置づけ、全社一丸でシステムの活用に取り組んでいる大同興業。その成長にますますの期待がかかる。